爪の変形について
爪の変形にはここで紹介する巻き爪と陥入爪以外にもスプーン爪や厚硬爪などいろいろな種類があります。原因も様々ですが、白癬症をはじめとする感染症、外傷、圧迫の他に、乾癬,扁平苔癬など他の皮膚疾患や内蔵の病気に合併して起こることもあります。従って治療を行う為には、まず正しい診断と原因の検討を行う必要があります。
以前は変形の治療法が少なく、ひどくなると爪を剥がすという治療も一般的に行われていました。そのため巻き爪であることを自覚していても、爪を剥がされるのことを恐れて病院に行かず、どんどん変形や症状を悪化させてしまう人も少なくありませんでした。今は治療法も進化しており、爪を剥がすことはほとんどありません。原因となる疾患によっては内服薬、外用剤も併用しながら変形を矯正していきます。
巻き爪とは?
巻き爪とは上の写真に示すような爪の状態で、深爪や先が細い履物、外傷や年齢など様々な要因で起こります。親指の爪におこる場合がほとんどですが、他指にも起こりえます。変形が軽い場合は見た目の問題だけですが、進行すると、爪が皮膚に食い込み、運動時や歩行時に痛みが生じます。場合によっては化膿し、歩くことも困難な状態になることがあります。爪水虫を合併している場合も多く、爪が白く濁る、厚くなるなどの変化がある場合は、検査が必要となります。放置しておくと進行する場合が多く、最終的に「の」の字状に変形することも珍しくはありません。
陥入爪とは?
陥入爪も治療が難しい爪のトラブルのひとつです。ほとんどの場合は深爪、足に合わない靴やスポーツ負荷が原因となります。爪の先端から中央部に炎症を起こし、悪化すると強く腫れて浸出液や赤い肉芽を生じてしまい、さらに治りにくくなります。くい込んだ爪の角を切ると一時痛みが和らぎますが、再び伸びた爪が深部に刺さり再発します。治療で抗生物質の内服外用、テーピング等が試されますが、効果が乏しいことも多く、やむを得ず手術が行われる場合もあります。しかし、術後に爪の変形や痛みが生じる事があり、最近では手術をできるだけ避けることが望ましいと言われています。
治療法の変遷について
当院では開院当初はの巻き爪に対してマチワイヤ-やクリップなどの爪矯正器具による治療を行い、その後ペディグラス、ボドフィックス、VHO方式のコレクティオなどを採用しました。しかし、ポドフィックスやコレクティオ法は、それぞれ矯正力が小さい、ワイヤの破損、脱落が多いなどの問題から、期待通りの矯正が出来ない事が判明しました。一方、ペディグラス法は確実な矯正力が得られており、現在まで500例以上の爪に対して実績を上げています。
しかしペディグラスの一番の問題点は、炎症の強い陥入爪に対しては装着できないことです。ペディグラス法では5mm幅のプラスティック板を爪の角に挿入しますが、大きな肉芽があると挿入時に鋭い痛みを生じてしまい、装着そのものを断念せざるを得ないケースも多くあります。またジクジクと浸出液が出ている場合は爪も水分を沢山ふくんでいるため、接着剤の固定性が悪く、2、3日で外れてしまいます。チューブ挿入なども試みましたが、残念ながら充分納得のいく結果は得られていませんでした。
そこで従来の方法で対応出来なかった上記の陥入爪を克服すべく、平成26年9月から香川県で開業されている十川先生の開発された「そがわ式爪矯正法」を導入しました。長年に渡り爪変形疾患に取り組まれてこられ、独自のワイヤ、器具を考案されてきた先生です。幾度も改良を重ねられており、現在ほぼすべての陥入爪に対応可能になっています。この矯正法の特徴としては、部位を問わないワイヤの爪への引っかけ、ワイヤの爪への固定における独自な接着手技等が挙げられます。また巻き爪にも応用可能で、比較的安価に行えます。当院では十川先生に御指導を頂き、平成26年秋より治療に導入し実績をあげています。
これまで治療がうまくいかなかった進行した陥入爪に威力を発揮しています。出来るだけ手術をしなくて済むように、患者さん本人の年齢、生活様式、症状を考慮し、最適な方法を考えます。
- Youtubeで「そがわ式」ワイヤー矯正を