一般皮膚科

アトピー性皮膚炎

賢く、根気よく塗りましょう!

 アトピー性皮膚炎の治療は、1)薬物療法—ステロイドや免疫抑制剤(タクロリムス軟膏)の外用や抗ヒスタミン剤の内服2)保湿剤などによるスキンケア、3)悪化因子(アレルゲンや生活習慣など)の回避を三つの柱として行われています。今回はアトピー性皮膚炎の治療で頻用されるステロイド外用剤、タクロリムス軟膏、保湿剤についてご説明します。

 ステロイド外用剤はアトピー性皮膚炎の中心となる治療です。炎症を抑える強さによってランク分けされていて、塗布する部位や症状の程度によりどのくらいの強さのものを使うか決めます。皮膚科で「顔用」「体用」とか「ひどいところ」「かるいことろ」などと何種類も外用剤を処方されるのはこのためです。ステロイド外用剤による治療のポイントは医師の指示に従って塗布する場所や強さ、量を守りつつ根気よく定期的に塗ることです。
よく治療がうまくいっていない患者さんに尋ねると、かゆい時、かゆいところだけにかゆみ止めのように塗っている方があります。一日1、2回定期的に塗布することが大事です。副作用を防ぎ、治療効果を最大限にあげるため塗布する回数、量、範囲が大切ですので、初診時はもちろん、当院では治療を大きく変更した時や経過が良くない時は、詳しく説明しながら実際に塗布する軟膏処置を行っています。

 一時マスコミや民間療法をビジネスとしている業者、一部の医師による誤った情報が氾濫したため、残念ながら今なおステロイド外用剤は副作用の強い、恐ろしい薬なので使いたくないという方がいらっしゃいます。しかしこれらの情報の多くはステロイドを内服した時の副作用が外用によっても同じように起こるという誤った考えに基づいています。確かに外用によっても血管拡張、皮膚萎縮、にきび、多毛など皮膚に限った副作用を起こすことはありますが、適切な使用により防ぐことや最小限に抑えることができます。そしてこれらの副作用は炎症が治まり、ステロイドの強さを弱めるか中止することにより回復するものです。この点に関しては日本皮膚科学会のホームページを参照されたらいいでしょう。

ステロイドが他の湿疹や炎症性の疾患にも使用されるのに対し、タクロリムス軟膏はアトピー性皮膚炎専用の外用剤で、1999年から使用されるようになった比較的新しい薬です。この薬はステロイド外用剤の副作用が他の部位より起こりやすい顔や首に長期にわたって安全に使用することができます。その一方で使用開始1週間くらいの間にひりひりした痛みや熱感などの刺激症状を生じることが多いのが欠点です。しかし、この不快な症状は少し我慢して使って頂くとほとんどの場合1週間以内に消失し、快適に使用できるようになります。また刺激症状のため一度使用を断念した方でも、ステロイドを塗っていったん炎症を抑えた後に使用する、あるいは時々ステロイドを併用するなどの工夫をすると使えるようになることも多いので、何度か試していただくようお勧めしています。

これまでのアトピー性皮膚炎の治療は改善するとステロイド外用剤を弱いものにランクダウンする、あるいはいったん中止し保湿のみとし再燃するとまたステロイドを外用するように指導してきました。これをリアクティブ療法と言います(アプローチ1)。

これに対して最近プロアクティブ療法という外用方法が推奨されるようになってきました。この方法はまずステロイドをしっかり塗って炎症を完全に鎮静化させた後に外用回数を徐々に減らしていき、週1回あるいは2週間に1回、同じ範囲に同じ強さのステロイド、あるいはタクロリムス軟膏を外用し再燃を予防するという方法です(アプローチ2)。
この外用法のメリットは再燃までの期間が長くなる、再燃しても炎症は軽くて短期間で寛解すること、またステロイドの総使用量を減らせるとも言われています。治療を成功させるには最初に炎症が完全になくなるまでしっかり外用すること、その後も再燃しないようにゆっくりと外用回数を減らしていくことになります。そのためには皮膚科医が炎症の状態を注意深く観察して外用回数を減らすタイミングを判断する必要があります。また患者さんは外用量や範囲、頻度を守ることが成功のカギとなります。なお、治療期間を通して保湿等のスキンケアは継続する必要があります。
当院でも中等症以上のアトピー患者さんやこれまでの外用方法でうまくコントロールできていないと感じていらっしゃる患者さんにこの方法をお勧めしています。

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